セントジョーンズワート(セイヨウオトギリソウ)

執筆者:Laura Shane-McWhorter, PharmD, University of Utah College of Pharmacy
レビュー/改訂 2020年 7月
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セントジョーンズワート(セイヨウオトギリソウ:Hypericum perforatum)の花は,生物学的に有効な成分としてヒペリシンおよびヒペルフォリンを含有する。セントジョーンズワートは中枢神経系のセロトニンを増加させる可能性があり,非常に高用量ではモノアミン酸化酵素阻害薬(MAOI)様の作用を示す可能性もある。

栄養補助食品の概要も参照のこと。)

効能

研究結果は様々であるが,セントジョーンズワートは希死念慮のない軽度から中等度のうつ病患者に有益である可能性がある。セントジョーンズワートをうつ病の治療に使用することについて,適切にデザインされた研究が複数実施されている。

推奨される用量はヒペリシン含有量が0.2~0.3%に規格化された製剤,ヒペルフォリン含有量が1~4%に規格化された製剤,または通常はその両方が規格化された製剤で300~900mg,経口,1日1回である。ヒペリシンはHIVをはじめとする莢膜を有する様々なウイルスを阻害するため,セントジョーンズワートはHIV感染症の治療にも有用と言われているが,プロテアーゼ阻害薬および非核酸系逆転写酵素阻害薬(NNRTI)と有害な相互作用を起こすことが証明されているため,使用を避けるべきである(1-2)。セントジョーンズワートは,乾癬をはじめとする皮膚疾患や小児の注意欠如・多動症(ADHD)の治療についても効果が主張されている。

エビデンス

多数のランダム化プラセボ対照試験により,軽度から中等度のうつ病や最近ではうつ病の治療におけるセントジョーンズワートの安全性および有効性が評価されてきた(3-8)。セントジョーンズワートは三環系抗うつ薬(アミトリプチリン,イミプラミン)とも比較されており,さらに最近では選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)のフルオキセチン,セルトラリンやパロキセチンと比較されている(4-8)。ほとんどのプラセボ対照試験では,軽度から中等度の抑うつ症状の治療にセントジョーンズワートの規格化されたエキスを1日1回300~900mg投与する場合,中程度の効果が示されている。セントジョーンズワート900mgは低用量のイミプラミンおよび低用量のフルオキセチンに相当するとした研究も複数ある。うつ病患者に対する使用では,プラセボまたは標準用量のセルトラリンの短期間投与を上回る有意な改善を示さなかったとの研究がある(7)。しかし,著者らはセントジョーンズワートもセルトラリンもともに長期間では同等の効果があるとしており,低用量で投与し薬物相互作用が懸念されない場合のうつ病治療薬として,セントジョーンズワートに新しい経済的価値が加わる可能性を指摘する(7)

全般に,軽度の抑うつに対するセントジョーンズワートの効力を示す研究はいくつかあるが,うつ病に対してはほとんどの研究が効力を示していない。研究デザイン(実薬対照とプラセボの欠如),研究対象集団(うつ病か軽度ないし中等度の抑うつか),研究期間,セントジョーンズワートや比較薬の用量の違いが,結果におけるいくつかの不一致の原因である可能性が高い。

しかし,うつ病に対するセントジョーンズワートの効果を検討した最近のレビューが2つある(9,10)。35の研究(6993例)を対象とした2016年のシステマティックレビューでは,セントジョーンズワートが,プラセボまたは従来型の抗うつ薬と比較された。軽度から中等度のうつ病において,セントジョーンズワートはプラセボより優れていたが,従来型の抗うつ薬との差はなかった。しかしながら,研究間には不均一性があり,また重度のうつ病は検討されなかった(9)。27の研究(3808例)を対象とした2017年のメタアナリシスでは,セントジョーンズワートとSSRIが比較された。軽度から中等度のうつ病において,反応および寛解に関してセントジョーンズワートはSSRIと同等であったが,中止率がより低かった(10)

セントジョーンズワートの局所投与で乾癬を含む皮膚疾患が緩和する可能性を示す極めて小規模な予備研究が2件ある(11-12)。ある小規模試験では,セントジョーンズワート(ヒペリシン含有量は規格化されているがヒペルフォリン含有量は規格化されていない)では小児における注意欠如・多動症(ADHD)の症状を軽減できないことが示された(13)

有害作用

光線過敏症,口腔乾燥,便秘,めまい,錯乱,躁病(双極性障害をもつ患者に)が起こりうる。セントジョーンズワートは妊婦では禁忌である。

薬物相互作用

セントジョーンズワートと有害な相互作用を起こしうる薬剤には,シクロスポリン,ジゴキシン,鉄サプリメント,モノアミン酸化酵素阻害薬(MAOI),非核酸系逆転写酵素阻害薬(NNRTI),経口避妊薬,プロテアーゼ阻害薬,選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI),三環系抗うつ薬,およびワルファリンなどがある。(14-16)

セントジョーンズワート(セイヨウオトギリソウ)に関する参考文献

  1. Maury W, Price JP, Brindley MA, et al: Identification of light-independent inhibition of human immunodeficiency virus-1 infection through bioguided fractionation of Hypericum perforatum.Virol J6:101-113, 2009. doi:10.1186/1743-422X-6-101.

  2. Kakuda TN, Schöller-Gyüre M, Hoetelmans RM: Pharmacokinetic interactions between etravirine and non-antiretroviral drugs.Clin Pharmacokinet 50(1):25-39, 2011. doi: 10.2165/11534740-000000000-00000.

  3. Solomon D, Adams J, Graves N: Economic evaluation of St. John's wort (Hypericum perforatum) for the treatment of mild to moderate depression.J Affect Disord 148(2-3):228-234, 2013. doi: 10.1016/j.jad.2012.11.064.

  4. van Gurp G, Meterissian GB, Haiek LN, et al: St John's wort or sertraline?Randomized controlled trial in primary care.Can Fam Physician 48:905-912, 2002.

  5. Woelk H: Comparison of St John's wort and imipramine for treating depression: randomised controlled trial.BMJ 321(7260):536-539, 2000. doi: 10.1136/bmj.321.7260.536.

  6. Fava M, Alpert J, Nierenberg AA, et al: A double-blind, randomized trial of St John's wort, fluoxetine, and placebo in major depressive disorder.J Clin Psychopharmacol 25(5):441-447, 2005.

  7. Sarris J, Fava M, Schweitzer I, et al: St John's wort (Hypericum perforatum) versus sertraline and placebo in major depressive disorder: continuation data from a 26-week RCT.Pharmacopsychiatry 45(7):275-278, 2012. doi: 10.1055/s-0032-1306348.

  8. Seifritz E, Hatzinger M, Holsboer-Trachsler E: Efficacy of Hypericum extract WS(R) 5570 compared with paroxetine in patients with a moderate major depressive episode - a subgroup analysis.Int J Psychiatry Clin Pract 20(3):126-32, 2016.doi: 10.1080/13651501.2016.1179765.

  9. Apaydin EA, Maher AR, Shanman R, et al: A systematic review of St. John's wort for major depressive disorder.Systematic Reviews 5:148, 2016.doi: 10.1186/s13643-016-0325-2.

  10. Ng QX, Venkatanarayanan N, Ho CY: Clinical use of Hypericum perforatum (St John's wort) in depression: a meta-analysis.J Affect Disord 210:211-221, 2017.doi: 10.1016/j.jad.2016.12.048.

  11. Najafizadeh P, Hashemian F, Mansouri P, et al: The evaluation of the clinical effect of topical St Johns wort (Hypericum perforatum L.) in plaque type psoriasis vulgaris: a pilot study.Australas J Dermatol 53(2):131-135, 2012. doi: 10.1111/j.1440-0960.2012.00877.x.

  12. Rook AH, Wood GS, Duvic M, et al: A phase II placebo-controlled study of photodynamic therapy with topical hypericin and visible light irradiation in the treatment of cutaneous T-cell lymphoma and psoriasis.J Am Acad Dermatol 63(6):984-990, 2010. doi: 10.1016/j.jaad.2010.02.039.

  13. Weber W, Vander Stoep A, McCarty RL, et al: Hypericum perforatum (St John's wort) for attention-deficit/hyperactivity disorder in children and adolescents: a randomized controlled trial.JAMA 299(22):633-2641, 2008.doi: 10.1001/jama.299.22.2633.

  14. Borrelli F, Izzo AA: Herb-drug interactions with St John's wort (Hypericum perforatum): an update on clinical observations.AAPS J11(4):710-727, 2009. doi: 10.1208/s12248-009-9146-8. 

  15. Nadkarni A, Oldham MA, Howard M, et al: Drug-drug interactions between warfarin and psychotropics: updated review of the literature.Pharmacotherapy 32(10):932-942. 2012. doi: 10.1002/j.1875-9114.2012.01119.

  16. Tsai HH, Lin HW, Simon Pickard A, et al: Evaluation of documented drug interactions and contraindications associated with herbs and dietary supplements: a systematic literature review.Int J Clin Pract 66(11):1056-1078, 2012. doi: 10.1111/j.1742-1241.2012.03008.x.

より詳細な情報

以下の英語の資料が有用であろう。ただし,本マニュアルはこの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。

  1. National Institutes of Health (NIH), National Center for Complementary and Integrative Health: General information on the use of St. John’s wort as a dietary supplement

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