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成人における心肺蘇生(CPR)

執筆者:

Robert E. O’Connor

, MD, MPH, University of Virginia School of Medicine

レビュー/改訂 2019年 12月
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【訳注:最新の情報については,2020 American Heart Association's guidelines for CPR and emergency cardiovascular careを,感染症を考慮した対応については,American Heart Association's COVID-19 Resuscitation Algorithmsを参照のこと。】心肺蘇生は 心停止 心停止 【訳注:最新の情報については,2020 American Heart Association's guidelines for CPR and emergency cardiovascular careを,感染症を考慮した対応については,American Heart Association's... さらに読む に対する系統立てられた一連の対応であり,以下の手順が含まれる:

  • 呼吸および循環の消失の確認

  • 胸骨圧迫および人工呼吸による一次救命処置

  • 確実な気道確保およびリズムコントロールによる二次救命処置(ACLS)

  • 蘇生後管理

胸骨圧迫を直ちに開始し絶え間なく続けることおよび早期の除細動(適応がある場合)が成功の鍵である。CPRの迅速性,効率性,および正しい適用と,可能な限り中断しないことが良好な転帰を決定づけるが,まれな例外として,冷水に浸かったことによる著しい低体温症があり,その場合は長時間(最大で60分)の心停止後であっても蘇生が成功する場合がある。

CPRの概要

(CPRおよび心血管救急処置に関するAmerican Heart Associationのガイドラインも参照のこと。)

American Heart Associationによる医療専門家向けガイドラインは以下の通りである(成人における包括的緊急循環管理 成人における包括的緊急循環管理 成人における包括的緊急循環管理 の表を参照)。人が倒れ,心停止による可能性がある場合は,救助者はまず反応がないことを確かめ,呼吸がないか喘ぎ呼吸しかないことを確認する。次に,救助者は応援を呼ぶ。応援者がいれば,救急隊の出動を要請する(または院内の適切な蘇生スタッフを呼ぶ)ように,また可能であれば除細動器を持ってくるように指示する。

応援者がなければ,救助者はまず救急隊の出動要請を行い,その後,1分間に100~120回の速さで胸骨圧迫を30回行い,気道を確保し(あご先を挙上させ頭部を後屈させる),2回の人工呼吸を加えることにより,一次救命処置を開始する。胸骨圧迫と人工呼吸のサイクルを絶え間なく継続する(医療従事者のためのCPRの方法 医療従事者のためのCPRの方法 医療従事者のためのCPRの方法 の表を参照);できれば,それぞれの救助者が2分毎に休息するのが望ましい。

除細動器(手動または自動)が使用可能になったら,心室細動(VF)または無脈性心室頻拍(VT)の患者には非同期で電気ショックを加える(除細動 除細動 【訳注:最新の情報については,2020 American Heart Association's guidelines for CPR and emergency cardiovascular careを,感染症を考慮した対応については,American Heart Association's COVID-19 Resuscitation Algorithmsを参照のこと。】心肺蘇生は... さらに読む も参照)。心停止が目撃され,除細動器がその場にあった場合,VFまたはVTの患者には直ちに除細動を行う;早期に除細動を行うと,VFまたは無脈性VTが速やかに灌流リズムに切り替わる可能性がある。バイスタンダーは,たとえ訓練経験がなくとも絶え間ない胸骨圧迫を開始し,熟練した救助者が到着するまで継続することが推奨される。

成人における包括的緊急循環管理

成人における包括的緊急循環管理

*訓練を積んだ人員が十分にいる場合は,患者の評価,CPR,救急隊の要請または院内緊急コールを同時に行うべきである。

American Heart AssociationのComprehensive Emergency Cardiac Care Algorithmに基づく。

1人および2人の救助者によるCPRで用いられる手技は 医療従事者のためのCPRの方法 医療従事者のためのCPRの方法 医療従事者のためのCPRの方法 の表に記載している。こうした技術の習得には,米国のAmerican Heart Association(1-800-AHA-USA1),またはそれに対応する他国の機構が提供するトレーニングコースなどに参加するのが最も望ましい。

気道および呼吸

バッグバルブマスク換気
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腹部膨隆が生じる場合は,気道の開通性を再確認し,人工呼吸により送る空気の量を減らす。胃の膨隆を和らげるための経鼻胃管挿入は,挿管時に胃内容物の誤嚥を伴う逆流が起こる可能性があるため,吸引装置が利用できるまで延期する。著しい胃の膨隆が換気を妨げ,上述の方法で是正できない場合,患者を側臥位にし,心窩部を圧迫し,気道を開通させる。

救命処置の資格をもつ者がいる場合, 気道確保および管理 気道確保および管理 気道管理は以下から成る: 上気道からの異物の除去 専用器具による気道開通性の維持 ときに呼吸補助 ( 呼吸停止の概要も参照のこと。) さらに読む に記載されているように,胸骨圧迫を中断することなく,高度な気道確保器具(気管内チューブまたは声門上デバイス)を挿入する。人工呼吸は,胸骨圧迫を中断することなく,6秒毎(1分に10回)に行う。しかしながら,胸骨圧迫および除細動が気管挿管よりも優先される。非常に熟練した救助者がいない限り, バッグバルブマスク換気 バッグバルブマスク 気道開通後も自発呼吸がなく,呼吸器具がない場合は,人工呼吸(口対マスクまたは口対バリアデバイス)を始める;口対口換気が推奨されることはほとんどない。呼気には酸素が16~18%と二酸化炭素が4~5%含まれており,これは血中の酸素と二酸化炭素値を正常値付近に保つのに十分な含有量である。必要以上に多量の送気は,胃膨隆を引き起こし,誤嚥のリスクを伴う可能性がある。 ( 呼吸停止の概要,... さらに読む ラリンジアルマスクエアウェイ ラリンジアルマスク(LMA) 気道開通後も自発呼吸がなく,呼吸器具がない場合は,人工呼吸(口対マスクまたは口対バリアデバイス)を始める;口対口換気が推奨されることはほとんどない。呼気には酸素が16~18%と二酸化炭素が4~5%含まれており,これは血中の酸素と二酸化炭素値を正常値付近に保つのに十分な含有量である。必要以上に多量の送気は,胃膨隆を引き起こし,誤嚥のリスクを伴う可能性がある。 ( 呼吸停止の概要,... さらに読む ,または同様の器具による換気を優先し,気管挿管を遅らせることもある。

ラリンジアルマスクの挿入
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循環

胸骨圧迫

成人における心肺蘇生(CPR)
動画

目撃のある心停止では,除細動が可能になるまで胸骨圧迫を中断なく続けるべきである。虚脱するところを目撃されていない患者では,訓練された救助者が胸骨圧迫(非開胸式)を直ちに開始すべきであり,次に人工呼吸を行う。胸骨圧迫は10秒以上中断してはならない(例,挿管,中心静脈カテーテル留置,または移送のために)。圧迫サイクルの構成としては,圧迫と解除を50%ずつにすべきであり,解除したときに胸郭が元の高さに完全に戻るのを確認することが重要である。除細動器が使用できるようになったら,直ちに圧迫を中断して(適応があれば)除細動を行う。

胸骨圧迫の深さは成人に対しては約5~6cmが推奨されている。胸骨圧迫による心拍出量は正常の20~30%であるものの,圧迫毎に触知可能な脈拍が生じるのが理想である。しかしながら,胸骨圧迫中の脈拍の触知は経験豊富な臨床医にとっても難しく,しばしばあてにならない。呼気終末の二酸化炭素モニタリングにより,胸骨圧迫中の心拍出量をより正確に推定しうる;循環が不十分な患者は肺への静脈還流量が少なく,それゆえ呼気終末二酸化炭素が少ない。自発呼吸の回復または開眼は自己心拍再開を示す。

自動心マッサージ器(mechanical chest compression device)が利用可能である;これは用手的圧迫が正しく行われた場合と同等に効果的で,誤った動作や疲労による影響を最小限に抑えることができる。また,患者の移送中や心臓カテーテル室でなど,特定の状況で役立つ可能性がある。

開胸式心マッサージが効果的な場合もあるが,穿孔性胸部損傷,心臓手術の直後(すなわち,48時間以内),心タンポナーデの症例,とりわけ手術室内の心停止ですでに開胸されている場合にのみ用いられる。ただし, 開胸 開胸術 開胸術は胸部の外科的切開である。 非侵襲的手技では診断がつかない,または確実な治療ができる可能性が低い場合に,肺疾患の評価および治療のために行われる。 開胸術の主な適応を以下に示す: 肺葉切除術 肺全摘除術 さらに読む は訓練と経験を必要とするため,こうした限られた適応の範囲内でのみ行うのが最善である。

胸骨圧迫の合併症

肝損傷はまれであるものの重篤(ときに致死的)となりうる合併症であり,通常胸骨より下の腹部を圧迫することで引き起こされる。胃破裂(特に胃が空気で膨満していた場合)もまた,まれな合併症である。遅延性の脾臓破裂が起こることは非常にまれである。しかしながら,ときに逆流に続発して胃内容物の誤嚥が起こり,蘇生された患者において生命を脅かす 誤嚥性肺炎 誤嚥性肺炎 誤嚥性の肺炎(pneumonia)および肺臓炎(pneumonitis)は,毒性および/または刺激性物質,最も一般的には大量の上気道分泌物または胃内容物を肺に誤嚥することで引き起こされる。化学性肺臓炎,細菌性肺炎,または気道閉塞が起こりうる。症状としては,咳嗽や呼吸困難などがある。診断は臨床像および胸部X線所見に基づく。治療および予後は,誤嚥された物質によって異なる。 ( 肺炎の概要も参照のこと。)... さらに読む が生じる。

十分な血流を供給するためには十分に深い胸部圧迫が重要であるため,肋軟骨の解離および肋骨骨折は,しばしば避けられない。小児は胸壁が軟らかいので,骨折は極めてまれである。胸骨圧迫後の肺への骨髄塞栓がまれに報告されるが,それが死亡の一因になるという明らかなエビデンスはない。肺損傷はまれであるが,折れた肋骨が貫通して 気胸 気胸(外傷性) 外傷性気胸は,外傷により胸腔内に空気が入った状態をいい,部分的または完全な肺虚脱を引き起こす。症状は,原因となる損傷による胸痛などであり,ときに呼吸困難が認められる。診断は胸部X線により行う。治療は通常,胸腔ドレナージによる。 ( 胸部外傷の概要も参照のこと。) 自然気胸については,本マニュアルの別の箇所で考察されている。 気胸は穿通性外傷または鈍的外傷により起こる可能性がある;多くの患者には... さらに読む が生じることがある。胸骨圧迫で重篤な心筋損傷が起こる可能性は非常に低いが,例外としては,先在する心室瘤の損傷がありうる。救助者は,これらの損傷を懸念してCPRの施行をためらうべきではない。

除細動

目撃のある成人の心停止で最もよくみられるリズムは 心室細動 心室細動(VF) 心室細動では,心室が非協調的に震動し,有効な収縮は発生しない。直ちに失神を来し,数分以内に死亡する。治療は,即時の除細動を含めた心肺蘇生による。 ( 不整脈の概要も参照のこと。) 心室細動(VF)は複数の微小な興奮波によるリエントリー性の電気活動を原因とし,心電図上では超高速の基線の動揺として出現し,動揺のタイミングと形態は不規則である。 VFは 心停止状態にある患者の約70%でみられる調律であり,したがって多くの疾患における最終的な事... さらに読む 心室細動(VF) (VF)である;灌流リズムへ迅速に戻すことが重要である。無脈性 心室頻拍 心室頻拍(VT) 心室頻拍は,連続で3拍以上にわたり心拍数が120/分以上となる状態である。症状は持続時間に依存し,無症状から動悸,血行動態の破綻,さらには死に至ることもある。診断は心電図検査による。短時間の発作に収まらない場合の治療には,症状に応じてカルディオバージョンまたは抗不整脈薬を用いる。必要な場合は,植込み型除細動器による長期治療を行う。 ( 不整脈の概要も参照のこと。) 心室頻拍(VT)のカットオフ値としては,心拍数100/分以上を採用してい... さらに読む (VT)もVFと同様に治療する。

成人における除細動
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カルディオバージョン カルディオバージョン/電気的除細動 不整脈治療のニーズは,不整脈の症状および重篤度に依存する。治療は原因に対して行う。必要に応じて, 抗不整脈薬,カルディオバージョン/電気的除細動, 植込み型除細動器(ICD), ペースメーカー(および特殊なペーシング, 心臓再同期療法), カテーテルアブレーション, 手術,またはこれらの併用などによる直接的な抗不整脈療法が用いられる。 胸壁を介して十分な強さのDCショックを加えると,... さらに読む の迅速な施行は, 抗不整脈薬 不整脈に対する薬剤 不整脈治療のニーズは,不整脈の症状および重篤度に依存する。治療は原因に対して行う。必要に応じて,抗不整脈薬, カルディオバージョン/電気的除細動, 植込み型除細動器(ICD), ペースメーカー(および特殊なペーシング, 心臓再同期療法), カテーテルアブレーション, 手術,またはこれらの併用などによる直接的な抗不整脈療法が用いられる。 ほとんどの抗不整脈薬は,主要な細胞電気生理学的作用に基づき,大きく4つの群(Vaughan... さらに読む より効果的であるが,除細動の成功率は時間に左右され,VF(または無脈性VT)発生後,1分毎に成功率は約10%ずつ低下する。自動体外式除細動器(AED)により,最小限の訓練しか受けていない救助者にもVTまたはVFの治療が可能となった。最初の応答者(警察や消防隊)によるAEDの使用や,公共の場においてAEDが非常に入手しやすくなったことで,蘇生率が上昇した。

除細動パドルまたはパッドは,胸骨右縁に沿った鎖骨と第2肋間の間,および第5または第6肋間の心尖部(中腋窩線上)に置く。従来型の除細動器パドルは,導電性のペーストとともに使用され,パッドには導電性のゲルが組み込まれている。まず1回のみの電気ショックを与えることが現在推奨されており(以前は3回連続のショックが推奨されていた),その後胸骨圧迫を再開する。二相性除細動器を使用する場合は,初回電気ショックのエネルギーレベルは120~200ジュール(小児では2ジュール/kg)に設定する;単相性除細動器を使用する場合は,初回電気ショックのエネルギーレベルは360ジュールに設定する。電気ショック後のリズムチェックは,2分間の胸骨圧迫に続いて行う。その後の電気ショックは,1回目と同レベルまたはそれを超えるエネルギーレベル(成人では最大360ジュール,小児では最大10ジュール/kg)で行う。VFまたはVTが持続する患者では,胸骨圧迫および換気を継続し,オプションとして 薬物療法 ACLSの薬剤 【訳注:最新の情報については,2020 American Heart Association's guidelines for CPR and emergency cardiovascular careを,感染症を考慮した対応については,American Heart Association's COVID-19 Resuscitation Algorithmsを参照のこと。】心肺蘇生は... さらに読む を行う。

モニタリングおよび静脈内投与

心電図モニタリングは心臓のリズムを確認する確立された方法である。静脈路の確保を開始する場合がある;2本のラインを確保することにより,CPR中に静脈へのアクセスを失うリスクを最小化する。肘部静脈に太いゲージの静脈路を確保するのが望ましい。成人および小児において末梢路が確保できない場合は,胸骨圧迫を中止せずに施行できるならば(難しい場合が多い),鎖骨下または内頸静脈から中心静脈路を確保することができる(処置 中心静脈カテーテル法 血管確保のためにいくつかの手技が用いられている。 大半の患者では,輸液および薬剤投与は経皮的な末梢静脈カテーテルで対応できる。ブラインドでの経皮的留置が困難な場合,超音波ガイド下に留置を行うことで通常はうまくいく。経皮的カテーテル挿入ができないまれな症例では静脈切開を行える。典型的な静脈切開部位は,前腕の橈側皮静脈および足関節の伏在静脈である。しかしながら,成人でも小児でも末梢挿入型中心静脈カテーテル(PICC:peripherally... さらに読む  中心静脈カテーテル法 を参照)。骨髄路および大腿静脈(骨髄内輸液 骨髄内輸液 血管確保のためにいくつかの手技が用いられている。 大半の患者では,輸液および薬剤投与は経皮的な末梢静脈カテーテルで対応できる。ブラインドでの経皮的留置が困難な場合,超音波ガイド下に留置を行うことで通常はうまくいく。経皮的カテーテル挿入ができないまれな症例では静脈切開を行える。典型的な静脈切開部位は,前腕の橈側皮静脈および足関節の伏在静脈である。しかしながら,成人でも小児でも末梢挿入型中心静脈カテーテル(PICC:peripherally... さらに読む 骨髄内輸液 を参照)は,特に小児において好まれる代用ラインである。大腿静脈カテーテル(処置 中心静脈カテーテル法 血管確保のためにいくつかの手技が用いられている。 大半の患者では,輸液および薬剤投与は経皮的な末梢静脈カテーテルで対応できる。ブラインドでの経皮的留置が困難な場合,超音波ガイド下に留置を行うことで通常はうまくいく。経皮的カテーテル挿入ができないまれな症例では静脈切開を行える。典型的な静脈切開部位は,前腕の橈側皮静脈および足関節の伏在静脈である。しかしながら,成人でも小児でも末梢挿入型中心静脈カテーテル(PICC:peripherally... さらに読む  中心静脈カテーテル法 を参照)は中心静脈まで進められる長いカテーテルが望ましく,CPRを中断する必要がなく,致死的な合併症の発生率が低いため選択肢の1つである;しかしながら,挿入時の指標となる大腿動脈の拍動がはっきり触知できないため,留置の成功率は低くなることがある。

特殊な状況

電撃 電撃傷 電撃傷は,作り出された電流が人体を通り抜けることにより引き起こされる損傷である。症状は,皮膚の熱傷,内臓および他の軟部組織への損傷から,不整脈および呼吸停止まで多岐にわたる。診断は病歴,臨床基準,および選択的な臨床検査に基づく。治療は支持療法であり,重度の損傷に対しては積極的なケアを行う。... さらに読む による事故では,救助者は自身が感電することを避けるため,患者が電源に接触していないことを確認しなければならない。非金属性の鉤竿または棒を使用したり,救助者をアースにつないだりすることで,CPR開始前に患者を安全に電源から引き離すことができる。

外傷に続いて心停止が起きた場合,治療可能な心停止の原因として最も可能性が高いのは気道閉塞であるため,気道を開通させた後,気道確保手技および一定時間の換気を行うことが最優先となる。頸椎損傷を最小限にするため,下顎挙上のみを行い,頭部後屈あご先挙上は行わないことが推奨される。他の外傷性心停止の原因として生存可能なものには 心タンポナーデ 心タンポナーデ 心タンポナーデは,心室充満を障害するほどの量および圧力の,心嚢における血液の貯留である。一般的には,低血圧,心音減弱,および頸静脈怒張がみられる。診断は臨床的に行い,しばしばベッドサイドの心エコー検査による。治療は,速やかな心嚢穿刺または心膜切開である。 ( 胸部外傷の概要も参照のこと。) 心嚢内の液体が心室充満を障害する可能性があり,心拍出量が減少して,ときに ショックを起こし死に至る。液体が緩徐に貯留する場合(例,慢性炎症による場合... さらに読む および 緊張性気胸 気胸(緊張性) 緊張性気胸は圧力下での胸腔内に空気が貯留した状態のことであり,肺を圧迫し,心臓への静脈還流量を減少させる。 ( 胸部外傷の概要も参照のこと。) 肺または胸壁の損傷が,空気が胸腔に入ることが可能でも出ていくことができない損傷(一方向弁)である場合に,緊張性気胸が発生する。その結果,空気が貯留して肺を圧迫し,最終的に縦隔を偏移させ,対側肺が圧迫され,心臓への静脈還流量が減少するほどに胸腔内圧が上昇し,... さらに読む 気胸(緊張性) などがあるが,直ちに針で穿刺し減圧するのが救命の要である。しかしながら,ほとんどの外傷性心停止の患者には,失血による重度の循環血液量減少(この場合胸骨圧迫は効果的でない可能性がある)または生存不可能な脳損傷がある。

ACLSの薬剤

長年広く使用されているにもかかわらず,心停止の患者において,生存退院を増加させると確実に証明されている薬剤または薬剤の組合せはない。一部の薬剤は実際に自己心拍再開(ROSC)の可能性を高めると考えられるため,投与を妥当とみなせる場合がある(用量については,小児も含めて 蘇生に用いる薬剤 蘇生に用いる薬剤* 蘇生に用いる薬剤* の表を参照)。ショックおよび心停止に対する薬物療法については,現在も研究が続けられている。

末梢静脈ラインが確保されている患者では,薬物投与に続き輸液をボーラス注入(成人では「全開で」静注;幼児では3~5mL)して,薬剤を中心循環へとフラッシュする。静脈路または骨髄路が確保できていない患者では,(適応がある場合は)ナロキソン,アトロピン,およびアドレナリンを,静注用量の2~2.5倍の量で気管内チューブから投与することがある。気管内チューブを介して薬剤を投与している間は,胸骨圧迫を一時的に中断すべきである。

第1選択薬

心停止で使用される主な第1選択薬は以下のものである:

  • アドレナリン

アドレナリンは3~5分毎に1mgを静脈内投与する。アドレナリンはαアドレナリン作用およびβアドレナリン作用を兼ね備えている。αアドレナリン作用は冠動脈の拡張期血圧を上昇させ,それによって胸骨圧迫中の心内膜下灌流を増加させる可能性がある。アドレナリンにより除細動の成功率も上昇する。しかしながら,βアドレナリン作用は,酸素必要量(特に心臓の)を上昇させ,血管拡張を引き起こすため,有害となることがある。アドレナリンの心腔内注射は,胸骨圧迫を中断させるだけでなく,気胸,冠動脈破裂,および心タンポナーデを引き起こす可能性があるため推奨されない。

アドレナリンを投与した後に除細動が成功しない場合,アミオダロン300mgを単回投与し,続いて150mgを1回投与することがある。アミオダロンは,除細動成功後にVTまたはVFが再発した場合にも有用な可能性がある;その場合,より低用量を10分かけて投与し,その後に持続静注を行う。アミオダロンが生存退院を増加させるという有力な証拠はない。

バソプレシン40単位の単回投与は,効果が40分持続し,アドレナリンの代わりとなる(成人のみ)。しかしながら,アドレナリンに比べて効果が優れているわけではなく,American Heart Associationのガイドラインではもはや推奨されていない。とはいえ,CPR中にアドレナリンがないという事態が発生した場合は(考えにくいが),バソプレシンで代用してもよい。

他の薬物

特殊な状況では,他の様々な薬剤が有用となりうる。

硫酸アトロピンは,心拍数および房室結節を介した伝導を増加させる迷走神経遮断薬である。症候性の徐脈性不整脈および高度の房室結節ブロックに対して投与される。心静止または無脈性電気活動には,もはや推奨されない。

塩化カルシウムは, 高カリウム血症 高カリウム血症 高カリウム血症とは,血清カリウム濃度が5.5mEq/L(5.5mmol/L)を上回ることであり,通常は腎臓からのカリウム排泄の低下またはカリウムの細胞外への異常な移動によって発生する。通常,カリウム摂取の増加,腎臓からのカリウム排泄を障害する薬剤,および急性腎障害または慢性腎臓病など,いくつかの寄与因子が同時に存在する。高カリウム血症は,糖尿病性ケトアシドーシスや,代謝性アシドーシスでも生じる可能性がある。臨床症状は一般に神経筋症状であ... さらに読む 高マグネシウム血症 高マグネシウム血症 高マグネシウム血症とは,血清マグネシウム濃度が2.6mg/dL(1.05mmol/L)を上回ったことである。主な原因は腎不全である。症状としては,低血圧,呼吸抑制,心停止などがある。診断は血清マグネシウム濃度の測定による。治療にはグルコン酸カルシウムの静注があり,フロセミドを投与してもよい;重症例では血液透析が役立つ場合がある。 ( マグネシウム濃度の異常の概要も参照のこと。)... さらに読む 低カルシウム血症 低カルシウム血症 低カルシウム血症とは,血漿タンパク質濃度が正常範囲内にある場合に血清総カルシウム濃度が8.8mg/dL(2.20mmol/L)未満であること,または血清イオン化カルシウム濃度が4.7mg/dL(1.17mmol/L)未満となった状態である。原因には,副甲状腺機能低下症,ビタミンD欠乏症,および腎疾患がある。症状としては,錯感覚,テタニーのほか,重度であれば痙攣,脳症,心不全などがある。診断には,血清アルブミン値で補正された血清カルシウム... さらに読む ,またはカルシウム拮抗薬中毒の患者に対して推奨される。他の患者では,細胞内カルシウム量がすでに正常よりも多いため,カルシウムの追加は有害である可能性が高い。腎透析を受けている患者の心停止は,しばしば高カリウム血症の結果として,またはそれに伴って起こるため,ベッドサイドでのカリウム測定ができない場合,カルシウムの試験的投与が有益なことがある。カルシウムはジギタリス中毒を増悪させ,心停止を引き起こす可能性があるため,注意を要する。

リドカインを心停止中にルーチン投与することはもはや推奨されていない。しかしながら,除細動に反応しないVFまたはVTにアミオダロンの代用として(小児において),あるいはVFまたはVTによるROSCの後に(成人において)役立つ場合がある。

プロカインアミドは,難治性のVFまたはVT治療の第2選択薬である。しかしながら,プロカインアミドは,小児の無脈性心停止(pulseless arrest)には推奨されない。

フェニトインはまれにVFまたはVTの治療に使用されることもあるが,VFまたはVTの原因がジギタリス中毒で,他の薬剤に抵抗性の場合に限られる。リズムが改善するまで,または総投与量が20mg/kgに達するまで,50~100mg/分を5分毎に投与する。

炭酸水素ナトリウムは,心停止の原因が高カリウム血症,高マグネシウム血症,または複雑な心室性不整脈を伴う三環系抗うつ薬の過剰摂取時を除き,もはや推奨されない。小児において心停止が遷延している(10分を超える)場合は,炭酸水素ナトリウムの使用を考慮してもよいが,換気が良好な場合にのみ投与する。炭酸水素ナトリウムを使用する場合,点滴静注前と50mEq(小児では1~2mEq/kg)投与する毎に動脈血pHをモニタリングすべきである。

不整脈の治療

VFまたは無脈性VTは,波形が確認されたら直ちに直流通電(できれば二相性波形による)を1回行うことで治療する。これに対して逆の事実を裏付ける研究室レベルのエビデンスが得られているが,胸骨圧迫を1周期行うために除細動の施行を遅らせることは推奨されていない。胸骨圧迫の中断は最小限にすべきであり,除細動時の中断は10秒を超えないようにすべきである。除細動に推奨されるエネルギーレベルには幅がある:二相性波形では120~200ジュール,単相性波形では360ジュールである。この治療が成功しなければ,アドレナリン1mg静注を3~5分毎に繰り返す。各薬剤の投与から1分後に,同レベル以上のエネルギーで除細動を試みる。VFが持続する場合,アミオダロン300mgを静注する。その後,VF/VTが再発する場合には,150mgを投与し,続いて1mg/分の点滴静注を6時間かけて行い,その後0.5mg/分とする。現行のAEDは小児用ケーブルを備えており,小児に与えるエネルギーを効果的に減少させられる。(小児のエネルギーレベルについては 除細動 除細動 【訳注:最新の情報については,2020 American Heart Association's guidelines for CPR and emergency cardiovascular careを,感染症を考慮した対応については,American Heart Association's COVID-19 Resuscitation Algorithmsを参照のこと。】CPRを施行しても,病院外での... さらに読む を参照のこと;薬剤の用量については 蘇生に用いる薬剤 蘇生に用いる薬剤* 蘇生に用いる薬剤* を参照のこと。)

モニターのリードの接続の緩みまたは接続が外れることにより心静止に似た波形が現れることがあり,その場合はモニターの接続を確認して,別のリードでリズムを読み取るべきである。心静止が確認されたら,アドレナリン1mgの静脈内投与を3~5分毎に繰り返す。見かけ上の(「細かいVFの可能性」もありうる)心静止に対する除細動は,灌流のない心臓が電気ショックにより損傷するため勧められない。

無脈性電気活動(PEA)とは,心電図上では十分な電気波形がみられるにもかかわらず,循環虚脱が生じている状態である。無脈性電気活動の患者には,生理食塩水500~1000mL(小児には20mL/kg)を点滴静注する。アドレナリン0.5~1.0mgを3~5分毎に繰り返し静脈内投与することがある。心タンポナーデは無脈性電気活動を起こす場合があるが,これが起こるのは通常,開胸手術後の患者,心嚢液または広範囲の胸部外傷を有する患者である。そのような状況下では,直ちに心嚢穿刺または開胸を行う(心嚢穿刺 治療 心膜炎とは心膜の炎症であり,しばしば心嚢液貯留を伴う。心膜炎は,多くの疾患(例,感染症,心筋梗塞,外傷,腫瘍,代謝性疾患)によって引き起こされるが,特発性のことも多い。症状としては胸痛や胸部圧迫感などがあり,しばしば深呼吸により悪化する。心タンポナーデまたは収縮性心膜炎が発生した場合には,心拍出量が大きく低下することがある。診断は症状,心膜摩擦音,心電図変化,およびX線または心エコー検査での心嚢液貯留の所見に基づく。原因の特定には,さら... さらに読む 治療 の図を参照)。心タンポナーデが心停止の潜在的原因であることはまれであるが,疑われる場合には,超音波検査か,超音波検査が行えない場合は心嚢穿刺によって確認できる。

蘇生の中止

CPRは,心肺機能が安定するか,患者が死亡宣告されるか,または救助者が1人しかいない場合体力的に限界が来るまで続けられるべきである。低体温により心停止が起きたと考えられる場合,CPRは体温が34℃に上昇するまで継続されるべきである。

蘇生を中止するという決定は臨床的なものであり,心停止の期間,患者の年齢,基礎疾患の予後を考慮する。一般的に,CPRおよびACLSでの手段を尽くしても自己心拍が戻らない場合,蘇生中止の決定がなされる。挿管患者では,呼気終末二酸化炭素濃度(ETCO2)10mmHg未満は予後不良徴候である。

蘇生後管理

蘇生後の臨床検査には動脈血ガス,血算,血液生化学検査(電解質,血糖値,BUN(血中尿素窒素),クレアチニンおよび心筋マーカーを含む)などがある。(クレアチンキナーゼはCPRによる骨格筋損傷のため通常は上昇している;CPRまたは除細動の影響を受けにくいトロポニンが望ましい)PaO2は正常値(80~100mmHg)に近くに保つべきである。ヘマトクリットは30%以上に維持し(心原性であると疑われる場合),血糖値は140~180mg/dL(7.7~9.9mmol/L)に維持すべきである;電解質,特にカリウムは正常範囲内に保つべきである。

冠動脈造影

経皮的冠動脈インターベンション(PCI)が必要であれば直ちに施行できるようにするため,適応があれば,冠動脈造影を(入院後に時間を置いてからではなく)緊急で施行すべきである。心停止からの蘇生後に 心臓カテーテル検査 心臓カテーテル法 心臓カテーテル法とは,末梢の動脈または静脈から心腔,肺動脈,冠動脈,および冠静脈までカテーテルを挿入する手技である。 心臓カテーテル法は,以下のものを含む様々な検査に用いることができる: 血管造影 血管内超音波検査(IVUS) 心拍出量(CO)の測定 さらに読む 心臓カテーテル法 を行うかどうかは,心電図,心血管インターベンション専門医の臨床的印象,および患者の予後に基づいて個別に決定すべきである。ただし,ガイドラインでは,心原性であることが疑われ,以下を認める成人患者には,冠動脈造影を行うことが提案されている:

  • 心電図でのST上昇(STEMI)または新規の左脚ブロック(LBBB)

一部の研究者は,病因が心臓由来である可能性が明らかに低い場合(例,溺水)や禁忌(例,頭蓋内出血)がある場合を除き,ROSC後にはほとんどの患者に対して心臓カテーテル検査が十分活用できるようにすることを提唱している。

脳機能の保護

心停止から回復した全ての患者のうち,中枢神経系の機能が良好な状態(cerebral performance category[CPC]スコアが1または2— 脳機能カテゴリースケール 成人用脳機能カテゴリースケール(Cerebral Performance Category Scale[Adult])* 成人用脳機能カテゴリースケール(Cerebral Performance Category Scale[Adult])* の表を参照)で退院できる患者は約10%に過ぎない。CPCスコア1は,良好な脳機能(患者は意識清明で,労働が可能であるが,軽度の神経脱落症状または心理的問題を有する可能性がある)を示す。CPCスコア2は,中等度の脳機能(患者は意識があり,日常生活動作[ADL]を行うことができ,単純な環境での労働が可能である)を示す。低酸素性脳損傷は,虚血による障害および脳浮腫の結果である(心停止の病態生理 病態生理 【訳注:最新の情報については,2020 American Heart Association's guidelines for CPR and emergency cardiovascular careを,感染症を考慮した対応については,American Heart Association's... さらに読む を参照)。損傷および回復のいずれも,蘇生後48~72時間の間に進行する。

酸素化および脳灌流圧の維持(灌流圧の低下を避ける)により,脳の合併症を軽減できる。低血糖も高血糖も虚血後の脳を損傷しうるため,いずれも治療すべきである。

成人では,自己心拍再開後も応答がない患者には,目標を定めた体温管理(体温を32~36℃に維持する)が推奨されている(1 蘇生後管理に関する参考文献 【訳注:最新の情報については,2020 American Heart Association's guidelines for CPR and emergency cardiovascular careを,感染症を考慮した対応については,American Heart Association's COVID-19 Resuscitation Algorithmsを参照のこと。】心肺蘇生は... さらに読む , 2 蘇生後管理に関する参考文献 【訳注:最新の情報については,2020 American Heart Association's guidelines for CPR and emergency cardiovascular careを,感染症を考慮した対応については,American Heart Association's COVID-19 Resuscitation Algorithmsを参照のこと。】心肺蘇生は... さらに読む )。自己心拍再開後はすぐに冷却を開始する。低体温に誘導し維持する方法には,体表からのものと侵襲的なものとがある。体表からの冷却法は簡単に利用でき,体表への氷パックの使用から,大量の冷水を皮膚の上で循環させる市販の体表冷却機器まで,様々である。体内からの冷却として,冷却した輸液(4℃)を急速に注入して体温を下げる方法があるが,これは大量の追加輸液に耐えられない患者では問題となりうる。体外式の熱交換デバイスもまた利用可能であるが,冷却した生理食塩水を患者内に注入するのではなくカテーテル内を流してデバイスに戻すという閉鎖回路を使用しており,これにより体内に留置した静脈内熱交換カテーテルに冷却した生理食塩水を循環させる。別の侵襲的冷却法には,体外デバイスを用いて血液を体外に流して冷却し,その後中心循環に戻す方法がある。どの方法を選ぶ場合でも,目標は患者の体を迅速に冷却し,深部体温を32~36℃に維持することである。現在のところ,この範囲内で具体的にどの体温にすると予後が改善するかを示したエビデンスはないが,高体温を避けることが絶対条件である。

フリーラジカルスカベンジャー,抗酸化物質,グルタミン酸阻害薬,およびカルシウム拮抗薬などの数多くの薬物治療は,理論上有益である;多くは動物実験では奏効しているものの,ヒト臨床試験で効果が証明されているものはない。

血圧の補助

平均動脈圧(MAP)は,比較的高齢の患者では > 80mmHgに,比較的若くそれまで健康だった患者では > 60mmHgに維持することが現在推奨されている。高血圧の患者における妥当な目標値は,収縮期血圧を心停止前より30mmHg低くすることである。MAPは動脈内カテーテルにより測定するのが最もよい。血流指向性肺動脈カテーテルを使用した血行動態モニタリングは,ほとんど行われなくなった。

血圧維持は以下の手段による:

  • 生理食塩水の静注

  • ときに強心薬または昇圧薬

  • まれに大動脈内バルーンパンピングによるカウンターパルセーション

MAP低下および中心静脈圧低下のある患者には,生理食塩水による輸液負荷を250mLずつ増加させながら注入すべきである。

強心薬および昇圧薬の使用により長期生存率が上昇することは証明されていないものの,比較的高齢の患者でMAPがやや低め(70~80mmHg)かつ中心静脈圧が正常または高い場合,強心薬(例,ドブタミンを2~5μg/kg/分で開始)を点滴静注する場合がある。アムリノンまたはミルリノンがまれに代替薬として使用される(蘇生に用いる薬剤 蘇生に用いる薬剤* 蘇生に用いる薬剤* の表を参照)。

これらの治療に効果がなければ,変力作用および血管収縮作用のあるドパミンの使用を考慮すべきである。代替手段は,アドレナリンならびに末梢血管収縮薬であるノルアドレナリンおよびフェニレフリンである(蘇生に用いる薬剤 蘇生に用いる薬剤* 蘇生に用いる薬剤* の表を参照)。ただし,血管作動薬は血管抵抗を上昇させ,(特に腸間膜床で)臓器灌流を低下させることがあるため,正常低値のMAPを達成できる最小用量で使用すべきである。また,心臓の能力が蘇生後の心筋機能障害によって低下しているときに,これらの薬剤を投与することで心臓の仕事量が増加する。

心筋梗塞の可能性がある患者でMAPが70mmHg未満にとどまる場合,大動脈内バルーンパンピングによるカウンターパルセーションを考慮すべきある。MAPが正常で中心静脈圧が高い患者は,強心薬による治療,またはニトロプルシドもしくはニトログリセリンによる後負荷軽減のいずれかにより改善する場合がある。

大動脈内バルーンパンピングによるカウンターパルセーションにより,薬物療法抵抗性の左室ポンプ不全が原因で生じた低拍出量性循環状態を補助できる。バルーン付きカテーテルは,経皮的または動脈切開によって大腿動脈から挿入され,左鎖骨下動脈からわずかに遠位の胸部大動脈まで逆行性に進められる。バルーンは拡張期のたびに膨んで冠動脈血流を増加させ,収縮期の間は縮んで後負荷を軽減する。この方法は,ショックの原因が手術または経皮的インターベンションによって修正できる可能性がある場合(例,主要な冠動脈の閉塞を伴う急性心筋梗塞,急性僧帽弁閉鎖不全,または心室中隔欠損)に,一時しのぎの手段として主に価値がある。

不整脈の治療

蘇生後は,心停止中,および蘇生中に生じた高濃度のβアドレナリン作動性カテコールアミン(内因性および外因性の両方)により速い上室頻拍が頻繁に起こる。こういったリズムが極端である場合,遷延する場合,または低血圧もしくは冠動脈虚血の徴候を伴う場合は,治療を行うべきである。エスモロール点滴静注は50μg/kg/分から開始する。

急性心筋梗塞を伴わないVFまたはVTによる心停止の患者は,植込み型除細動器(ICD)の候補である。現在のICDはペースメーカーと同様に植え込むことができ,心臓内のリードおよび,ときに皮下電極を有する。これらが不整脈を感知し,適応に応じて電気的除細動または心臓ペーシングを行う。

蘇生後管理に関する参考文献

成人におけるCPRについてのより詳細な情報

  • American Heart Association's guidelines for CPR and emergency cardiovascular care

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