再発性アフタ性口内炎

執筆者:Bernard J. Hennessy, DDS, Texas A&M University, College of Dentistry
レビュー/改訂 2020年 5月
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再発性アフタ性口内炎は,円形または卵円形の有痛性潰瘍が口腔粘膜に再発する一般的な病態である。病因は不明である。診断は臨床的に行う。治療は対症療法であり,通常コルチコステロイドの局所塗布を含む。

口内炎および歯科患者の評価も参照のこと。)

成人では20~30%が再発性アフタ性口内炎(RAS)に罹患し,小児はいずれかの時点でより高い頻度で罹患する。

再発性アフタ性口内炎の病因

病因は不明であるが,再発性アフタ性口内炎(RAS)は家族内発症の傾向がある。損傷は主にT細胞媒介性である。IL-2,IL-10,特にTN-αなどのサイトカインが関与している。

素因としては以下のものがある:

  • 口腔外傷

  • ストレス

  • 食品,特にチョコレート,コーヒー,ピーナッツ,卵,シリアル,アーモンド,苺,チーズ,およびトマト

アレルギーの関与はないようである。

理由は不明であるが,防御因子には経口避妊薬,妊娠,ならびに無煙タバコおよびニコチン含有タブレットを含むタバコ類がある。

再発性アフタ性口内炎の症状と徴候

症状と徴候は通常小児期に始まり(患者の80%は30歳未満),加齢に伴い発症頻度と重症度が低下する。症状は,1年に1個の潰瘍が2~4回再発する程度のこともあれば,古い潰瘍が治癒すると新しい潰瘍ができる,ほとんど持続性の病変のこともある。潰瘍形成前に1~2日間疼痛または灼熱感などの前駆症状を伴うが,小水疱もしくは水疱は先行しない。病変の大きさに不釣り合いの重度の疼痛が4~7日間持続しうる。

アフタ性潰瘍は境界明瞭で,浅く,卵円形または円形,そして中心部が壊疽性であり,灰黄色の偽膜,紅輪,およびわずかに隆起した赤い辺縁を伴う。

小アフタ性潰瘍が症例の85%を占める。小アフタ性潰瘍は口底,舌縁と舌下面,頬粘膜,および咽頭に発症し,直径8mm未満(典型的には2~3mm)で,10日間以内に瘢痕を形成せずに治癒する。

小アフタ性潰瘍(口唇)
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この写真には,口唇の内側に生じた小アフタ性潰瘍(口内炎)が写っている。写真の潰瘍は典型的な小アフタ性潰瘍よりも大きい。
DR P. MARAZZI/SCIENCE PHOTO LIBRARY

大アフタ性潰瘍(サットン病,再発性壊死性粘膜腺周囲炎)は症例の10%を占める。思春期後に出現し,前駆症状はさらに劇症で潰瘍は深く,直径1cmを超える大きさであり,小アフタ性潰瘍より長期間(数週~数カ月間)持続する。大アフタ性潰瘍は,口唇,軟口蓋,および喉に発生する。発熱,嚥下困難,倦怠感,および瘢痕を生じることがある。

大アフタ性潰瘍
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この写真には,口唇の内側に生じた大アフタ性潰瘍(白色の領域)が写っている。
DR P. MARAZZI/SCIENCE PHOTO LIBRARY

ヘルペス様アフタ性潰瘍(形態学的にヘルペスに類似するがヘルペスウイルスとは無関係)は症例の5%を占める。この病変の始まりは,直径1~3mmの小さな有痛性の潰瘍塊が多数(100個まで),紅斑を基底として出現する。それらが癒合して大潰瘍となり,2週間にわたって持続する。他の再発性アフタ性口内炎に比べ,女性に多く,発症年齢が遅い傾向がある。

再発性アフタ性口内炎の診断

  • 臨床的評価

評価は,口内炎で記載したように進める。確定的な組織学的特徴または臨床検査が存在しないため,診断は外観および除外に基づく。

単純ヘルペスによる初発の口腔ヘルペスは再発性アフタ性口内炎(RAS)に類似しており,通常は低年齢の小児に発症するが,常に歯肉に波及し,いずれの角化粘膜(硬口蓋,付着歯肉,舌背)も侵す可能性があり,全身症状を伴う。単純ヘルペスを同定するためにウイルス培養を行うことができる。再発性のヘルペス病変は通常片側性である。

しばしば多数の潰瘍を伴う同様の再発性発作がベーチェット病炎症性腸疾患セリアック病HIV感染アフタ性口内炎,咽頭炎,およびリンパ節炎を伴う周期熱(PFAPA)症候群,ならびに栄養欠乏で起こりうるが,これらの病態は一般的に全身症状と徴候を伴う。孤立性再発性口腔潰瘍は,ヘルペス感染,HIV,およびまれに栄養欠乏で生じうる。ウイルス検査および血清血液学検査によりこの疾患を同定できる。

薬物反応はRASに類似するが,通常一時的に摂食と関係する。しかしながら,食物または歯科製作物に対する反応は同定するのが難しく,それらを順次除去することが必要である。

再発性アフタ性口内炎の処置/治療

  • クロルヘキシジンおよびコルチコステロイドの局所塗布

口内炎の一般的な治療法は,再発性アフタ性口内炎(RAS)の患者に有効なことがある。

グルコン酸クロルヘキシジン洗口液およびコルチコステロイドの局所塗布は治療法の中心であり,可能であれば前駆症状の期間に用いるべきである。コルチコステロイドはデキサメタゾン0.5mg/5mL,1日3回洗口剤として使用し,その後吐き出す,またはクロベタゾール軟膏0.05%もしくはフルオシノニド軟膏0.05%をカルビメチルセルロース粘膜保護ペーストに混合(1:1)して1日3回塗布する。これらのコルチコステロイドを使用している患者では,カンジダ症をモニタリングすべきである。もしコルチコステロイドの局所塗布が効果的でなければ,プレドニゾン(例,40mg,1日1回経口)を最長で5日間投与する必要があろう。

持続性または極度に重症のRASは,口腔の専門家の治療を受けるのが最善である。治療には,コルチコステロイド,アザチオプリンまたは他の免疫抑制薬,ペントキシフィリンもしくはサリドマイドを長期間全身投与する必要がある。ベタメタゾン,デキサメタゾン,またはトリアムシノロンは病変内注射にて投与する。補足B1,B2,B6,B12,葉酸,または鉄のサプリメントは,一部の患者においてRASを軽減する。

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